取材 : 東京大学生産技術研究所 腰原幹雄助教授
先の構造計算書偽装問題で広く報道された「震度5以上で倒壊」という表現は、多くの誤解を招いているようです。確かに一般には地震の強さを「震度」で表現していますが、震度は揺れの度合いを表現したものであり、必ずしも建物が壊れるかどうかの指標ではありません。
地震が建物を壊す能力は揺れだけではなく、さまざまな要素の組合せで決まります。同じ震度の地震でも、場所や地盤、地震の性質によって全然違う性能を持つのです。つまり、震度6で倒れない建物が震度5でも倒れてしまう可能性があるということです。そういったことを広く知っていただきたいのです。
以前震度は、体感や実際の被害から推定していましたが、平成8年4月から計測震度計で観測しています。そのため、震度5でも被害がほとんどない、被害と震度が必ずしもリンクしないという現象が起きています。
これには計測方法の違いに加え、地震の性質の違いも関係しています。数字上は同じ震度5でも、周期(1秒間に何回揺れるか)が違えば壊れやすい建物は違ってきます。木造住宅は1秒間に1回か2回揺れる波が多いと壊れやすく、鉄骨・RC造は1秒間に10回程度の揺れが長く続くと壊れやすいのです。どちらの波の成分が多いかで、どのタイプの建物が多く壊れるかが決まるわけです。