取材 : 東京大学生産技術研究所 腰原幹雄助教授
耐震強度不足の住宅がなぜ問題になるのでしょうか?
理由は二つあります。一つは、家が倒壊して住んでいる人の命が失われる可能性があるから。もう一つは、倒壊した家が他の家の救助活動や避難をさまたげる可能性があるからです。
家の倒壊による自分自身の危険についてはよく考えても、倒壊した建物がまち・社会の中で問題を起こすということについては、意外と考えられていないように思います。
阪神・淡路大震災では、倒壊した建物が道をふさぎ、救急車、消防車が近寄れず、火が消せない、助かる命も助けられないということが起こってしまいました。倒壊した建物が隣りの建物を押しつぶしもしました。
都心の耐震性の低い住宅に高齢者だけで住んでいる世帯が多く存在します。その高齢者の中には、自分の住宅は地震にあって倒壊してもかまわないと考える方もいらっしゃるのですが、自分の家だけの問題ではないということを認識していただくことが、急務なのではないでしょうか。
人の命はもちろん大切ですが、経済的な損失、社会的インフラの損害を含め億、兆に近い経済的ダメージは、復興の大きな障害になります。
自分の家とはいえ社会の構造物である。つまり、家を守るのではなくまちを守る、という考え方がないと耐震補強は進んでいかないと感じています。