取材 : (一財)ベターリビング 遊佐秀逸部長
日本では、作業環境基準(空気1リットルあたり150本)はありますが、一般環境ではありません。環境省が目標値として定めた、空気1リットルあたり10本という値は、アスベスト製品生産工場の敷地境界線にたいしてであって、一般環境ではありません。
アメリカでは昔、工場作業員がマスクをつけなければいけない基準(アクションレベル)は、52000本/l(空気1リットルあたり52000本)でした。1972年くらいから基準を強化して、現在、1日8時間、週5日、50年間働くと計算して100本/lとされています。つまりそれ以下の環境ならば、マスクをつける必要はないということです。
フランスでは、一般の建物内の濃度に関して、5本/l以下であれば3年以内に定期的な検査を行う、5~25本/lであれば2年以内に定期的検査を行う、25本/l以上であれば12ヶ月以内に除去、封じ込めなどの適切な工事を実施し、工事後の濃度は5本/l以下でなくてはならないとしています。
私たちが通常生活している環境の中でアスベストが建材に使われていても、それはセメントの中に封じ込められているか、あるいはほかの他の建材に覆われていて、むき出しの状態であることはまずありません。そういう環境のアスベスト濃度は、極めて低いと考えていいでしょう。
むやみにアスベストをこわがって専門技術がない人が除去すると、逆にアスベストを飛散させることになってしまいます。アスベストがあっても、触ったり、つついたり、物をぶつけたりなど、刺激や振動を与えてアスベストが飛散しないように気をつけ、改修のときには専門知識のある業者などに依頼し、正しい処理工事をしてもらうことが大切です。
さまざまな法律が改正され、今後アスベスト除去工事が多くなってくることが予測されますが、くれぐれもむやみに恐がらないこと、正しい知識と情報を持って冷静に対処することが必要です。