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住宅とアスベスト

アスベストってどんなもの

取材 : (一財)ベターリビング 遊佐秀逸部長

大きな注目を集めたアスベスト問題
作業員だけの問題ではなかった。

2005年6月、尼崎市にあるクボタ旧神崎工場の従業員とその家族、工場付近の住民が、アスベスト繊維の吸引に起因すると考えられる中皮腫、肺ガンで死亡したと発表されました。
当時工場では、作ったアスベストセメント管をサンダーで削る作業を行っていたため、もうもうとアスベストの塵が舞っている状態だったそうです。しかも使われていたアスベストは、発ガン性が最も高く危険(=繊維の組成や形状による)といわれている、クロシドライトでした。
このような状況に長期間さらされた結果、従業員や作業着を洗濯する家族だけでなく、近隣住民もアスベストに起因する病気を発症したといわれています。

アスベスト問題の歴史
アメリカの例から

かつてアメリカは、アスベストの最大消費国でした。アスベストは、古くはギリシャ時代から魔法の布として使われていましたが、近代以降、第二次世界大戦中の軍艦、その後は断熱材や吸音材、鉄骨の耐火被覆として大量に使用されていました。しかし、南アフリカのアスベスト鉱山、造船所や軍港、アスベスト生産工場の労働者から肺ガンや中皮腫が発生し、その原因がアスベストであることがわかってきました。
そこで1986年、アメリカ環境保護庁(EPA)が「代替品のあるものについては即時禁止、その他のアスベスト含有材料の使用を10年間で段階的に禁止する」という法案を議会に提案し、日本でもアスベスト問題が取りざたされるようになります。しかし、このアスベスト禁止最終規則はその後1991年に無効との判決をうけ、現在は存在していません。
当時アメリカもパニックのような状態になりましたが、その後、むやみに除去工事をしても、アスベスト濃度は除去後のほうが高くなることも多いとわかり、現在では建材に使用されていても建物を解体するまでは除去せず、飛散しないように監視を続けるという方針になっています。
日本では学校の吹付けアスベストが問題になりましたが、これらは原則としてすべて除去されました。