シックハウス対策
- ●アクティブ採取法、パッシブ採取法
- アクティブ採取法はポンプを用いて強制的に一定流量の空気を捕集管に通し、試料を採取する方法である。一方、パッシブ採取法は、動力を使わず室内の自然の気流の状態で試料を採取する方法である。
- ●アセトアルデヒド
- 刺激臭のある無色の液体、沸点が20.2℃で高揮発性です。反応性がいいので合成樹脂、合成ゴムなどの様々な化学製品を合成するときに原料として使われます。タバコの煙にも含まれ、お酒を飲んだ場合人間の体内でも生成され、二日酔いの原因になります。アセトアルデヒドは人の皮膚や粘膜(目、鼻、気道)に強い刺激を与えます(*)。
(*)厚生労働省の室内濃度指針値は0.03ppm
- ●アレルギー性疾患
- 外部からの刺激(抗原:アレルゲン)と生体を守ろうとする抗体が結合(反応)して抗原の働きを止め、無毒化する反応を抗原抗体反応というが、この疾患は、激しい抗原抗体反応によって起こる疾患のことである。
例:皮膚及び粘膜に見られるアレルギー性疾患
・皮膚:アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎
・粘膜:花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息
- ●ABS樹脂
- ABSは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの頭文字で、これらの3物質の「共重合体」と呼ばれる樹脂である。熱可塑性(熱を加えると柔らかくなって、変形後もその形を保持する性質を持つ)樹脂に分類される。長期間使用でき、衝撃に強い、成形しやすい等の特徴があるため、自動車、家電製品、プリンターやパソコン等の機器、外装材や建材、玩具などに広く用いられている。
- ●FF式ストーブ
- 室外から吸気し、燃焼ガス(一酸化炭素や窒素酸化物等)も室外へ排気する密閉型ストーブのことである。その中でも吸気部に小型のファンを付け、強制的に通風し壁から離れた位置にも設置可能なものをFF式燃焼機器という。
- ●エマルション塗料
- 塗料の主成分である油や樹脂を水中に乳化した塗料である。一般に互いに混合しない液体の一方が微細化し、他方の液体中に分散して乳化した液体のことをエマルションと呼ぶ。
エマルションは分散媒である水が脱却することにより、エマルション粒子が凝集・融着して連続した皮膜を形成する。有機溶剤の代わりに水を使った水性塗料なので、人への健康や地球環境に悪影響を及ぼすことが少ないといえる。
エマルションは、その他にも接着剤、食品、化粧品、油剤などさまざまな分野で広く利用されている。
- ●エチルベンゼン
- 無色で特有の芳香を持ち、常温では可燃性の液体です。接着剤や塗料の溶剤、希釈剤として通常は他の溶剤と混合して用いられます(*)。高濃度の短期暴露では喉や目に刺激があり、数千ppmになるとめまいや意識低下を起こすことがあります。 (*)厚生労働省の室内濃度指針値は0.88ppm
- ●MSDS(化学物質等安全データシート)
- MSDS(Material Safety Data Sheet)とは、化学物質およびそれらを含有する製品(指定化学物質等)の物理化学的性状、危険有害性、取扱上の注意等についての情報を記載した化学物質等安全データシートのことである。平成11年7月に公布、平成13年に施行されたPRTR法(略称を「化学物質管理促進法」)において、政令で指定された指定化学物質等を取り扱う事業者(指定化学物質等取扱事業者)には、化学物質の人の健康や環境への悪影響をもたらさないよう化学物質等を適切に管理する社会的責任があることから、指定化学物質等を他の事業者に譲渡・提供するときは、その相手方に対してMSDSの提供が義務付けられた。住宅生産者や購入者は、このシートの提出をメーカーに対して求めることができる。ただし、現状では、含有量1%未満の物質についてはMSDSに記載する必要がない。
- ●MDF
- ミディアムデンシティファイバーボードのことで、木材などの植物繊維を原料とし、合成樹脂接着剤を加え、成型熱圧した密度0.8未満、0.35g/cm<sup>3</sup>以上の板のことをいう。断面は繊維がぎっしりつまり平滑で表裏面ともほぼ同様の平滑性をもっている。
- ●化学物質過敏症
- 最初にある程度の量の化学物質に暴露されて、一旦過敏症になると、その後極めて微量の同系統の化学物質に対しても過敏症状をきたすものがあり、化学物質過敏症と呼ばれている。化学物質との因果関係や発生機序については未解明な部分が多く、今後の研究の発展が期待されている。
- ●可塑剤
- ポリ塩化ビニル等の材料に柔軟性を与えたり、加工をしやすくするために添加する物質である。その主成分は酸とアルコールから合成されるエステル化合物で、その代表的なものがフタル酸を使ったエステル化合物である。
- ●感作性物質
- 生体がある物質に対して反応性を高めるように操作するような働きをもつ物質のこと。
具体的には、生体に抗原を投与して、同じ抗原の刺激に対し強く反応する免疫状態や、アレルギー症状の中で生命の危険をもたらすような反応を起こりやすくさせるような物質のことをいう。
- ●キシレン
- 無色で芳香を持ち、常温では可燃性の液体です。接着剤や塗料の溶剤、希釈剤として通常は他の溶剤と混合して用いられます。揮発性が高くトルエンと同じように室内に放散します(*)。高濃度では喉や目に刺激があり、長期暴露で頭痛、めまい、意識低下などを引き起こすことがあります。 (*)厚生労働省の室内濃度指針値は0.20ppm
- ●揮発性有機化合物(VOC)
- Volatile Organic Compoundsの略称で、空気中に揮発する有機化合物全体を指すものである。
しかし、範囲が広く漠然としているので、WHOでは室内空気汚染の観点か有機化合物の沸点をもとにVOCを定義している。
- ●クロルピリホス
- 常温では無色または白色の結晶で水には溶けにくく、融点は42℃前後で、常温の結晶での揮発性はかなり低い特性を持ちます。有機リン系の殺虫剤で家庭内では防蟻剤として床下などに使用されます。軽症の中毒時の症状として、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気、腹痛などを起こすことがあります(*)。 (*)クロルピリホスを含む建築材料の使用は禁止されました
- ●計画換気
- 計画換気とは、常時出入り口を明確にして必要な量の新鮮空気を取り入れ、汚れた空気を排出することである。その方法として機械換気と自然換気がある。自然換気の場合は、室内外の温度差や風の強さ・向き等によって換気量が左右され、一定の換気量が確保できない場合があるので、計画の際の十分な考慮が必要である。
- ●高速液体クロマトグラフ法・ガスクロマトグラフ法
- クロマトグラフは、複雑に混合した状態で存在している多数の微量有機化合物を細かく分離して、個々の化合物の存在量を調べることを可能する装置を利用した分析方法で、精密測定では一般的に用いられている方法である。クロマトグラフ法は大きな面積を有する固定相と呼ばれる部分と、これに接して流れる移動相との間に、分離すべき成分を分配させる物理的な方法である。成分が含まれた試料が液体状か気体状かの違いにより液体クロマトグラフ法とガスクロマトグラフ法に分類される。
- ●自然換気
- 自然換気は、室内外温度差に基づく空気の密度差を利用する重力換気と、風圧力を利用する風力換気とに分けられる。自然換気は、自然力に依存しているため、動力を必要としないという利点はあるが、条件によっては期待される換気量を確保できない場合があるので、採用する際にはその点を考慮する必要がある。
- ●シックハウス症候群
- 住宅の気密化や化学物質を放散する建材・内装材の使用等により、新築・改築後の住宅やビルにおいて、化学物質による室内空気汚染により、居住者の様々な体調不良が生じている状態が、数多く報告されている。症状が多様で症状発生の仕組みをはじめ、未解明な部分が多く、また様々な複合要因が考えられることから、シックハウス症候群と呼ばれている。(厚生労働省による参考定義)
- ●登録住宅性能評価機関
- 住宅性能表示制度を利用する方に対して、住宅性能評価を行い、住宅性能評価書の交付を行う機関のことで、国土交通大臣の資格審査を経た機関のみが登録住宅性能評価機関となる。
住宅性能評価は、国土交通大臣が定める評価方法基準に従って行う。具体的な内容としては、設計図書の評価と「設計住宅性能評価書」の交付、現場での3回以上の中間検査と竣工時の完成検査の計4回以上の検査と「建設住宅性能評価書」の交付である。この2つの評価書には「住宅性能表示マーク」が付けられる。このマークは、登録住宅性能評価機関が適正に評価した時以外は、付けることが禁じられている。
- ●スチレン
- 無色または黄色を帯びた特徴的な臭気のある、常温では油状の液体です(*)。ポリスチレン樹脂、合成ゴム、合成樹脂塗料などから揮散することがあり、断熱材、浴室ユニット、家具などに未反応モノマーが残留していると室内に放散します。60ppmで臭気を感じ始め、高濃度の場合は目や鼻への刺激、眠気、脱力感、めまいを引き起こすことがあります。 (*)厚生労働省の室内濃度指針値は0.05ppm
- ●全般換気と局所換気
- 全般換気は、希釈換気とも呼ばれ、汚染源から室内へ放出された汚染質を、室内空気を排出することにより室外に排出する換気方法で、家全体を常時換気する。一方、局所換気は汚染された部分を局所的に換気する方法で、住宅ではレンジフードが代表的なものである。
- ●第1種換気から第3種換気
- 換気の種類には以下の3つがある。 第1種機械換気(機械給排気型):機械給気と機械排気を用いる換気システムで、熱交換器や冷暖房システムとの組合せが可能である。特徴として確実な換気量が確保できることがあげられる。
第2種機械換気(機械給気型):機械給気と適当な自然排気口との組合せで構成される換気システムで、一般的に外気取入れ口に空気清浄機が設置される。このシステムを使用する場合、室内が正圧となる。したがって、壁体内に結露が生じる可能性が高くなるので、その点の対応を考えておく必要がある。
第3種機械換気(機械排気型):機械排気と適当な自然給気口を組合せることによって構成される換気システムである。この換気方式を使用する場合には、住宅の気密性を高めることが必要である。
- ●単板積層材
- 合板は単層の板(単板)を繊維方向に交互にクロスさせて重ね合わせているが、単板積層材は主として繊維方向を平行にして重ね合わせ接着したもので、平行合板あるいはLVLとも呼ばれている。強度・寸法の安定性、長尺製品が得られることなどの特徴からおもに骨組材(棒状製品・軸材)として使用される。
- ●TVOC
- TVOC(Total Volatile Organic Compounds)とは、可能な限り、同定、定量した複数のVOC混合物の濃度レベルのことで、ガスクロマトグラフによって分離定量されたVOCの総計である。現在、わが国では、室内空気質のTVOCについては、暫定目標値として400μg/m3とされている。この数字は、現時点で得られる室内VOC実態等の調査結果を最大限活用し、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定した空気質の状態の目安で、毒性学的見地から求めた値ではない。
- ●測定対象物質
- 日本住宅性能表示基準において、厚生労働省で指針値が定められている化学物質のうち、濃度表示を申請した場合に、測定することが定められている化学物質のことで、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、アセトアルデヒドをさしている。このうち、ホルムアルデヒドは必ず測定することが定められており、他の5物質は申請者が選択することができる。
- ●特定建材
- 日本工業規格(JIS)及び日本農林規格(JAS)において、ホルムアルデヒドの放散量によって等級が定められ表示等が実施されている材料で、パーティクルボード、MDF、合板、構造用パネル、フローリング、集成材、単板積層材、壁紙、塗料、接着剤、保温版、断熱材、仕上塗材をさしている。
- ●パーティクルボード
- 木材の残廃材、建築解体材、小径木などを原料とし、細かく切削した木材の小片に合成樹脂接着剤を加え、高温、高圧で成形したものである。木材の方向性をなくし狂いを防ぐ目的で作られたものである。
- ●トルエン
- 無色で芳香を持ち、常温では可燃性の液体です。揮発性が高く、内装剤の施工用接着剤や塗料、家具の接着剤などから室内に放散します。人が臭いを感じるのは0.48ppmあたりからといわれています(*)。高濃度では喉や目に刺激があり、長期に浴びた場合は、頭痛、疲労、脱力感などの神経症状や不整脈を起こすことがあります。 (*)厚生労働省の室内濃度指針値は0.07ppm
- ●ppmとμg/m3
- ppmというのは化学物質の量を体積として示した単位で、空気の体積1000Lに対して100万分のいくつに当るかを示したものである。たとえば、ホルムアルデヒド0.01ppmとは、空気1000Lに対して0.01mLとなる。一方、μg/m3は空気の体積1m3あたりの化学物質の量を重量で示したものである。気体の体積は、温度が高くなると増加するため学術的にはmg/m3やμg/m3という単位が用いられる。ホルムアルデヒドの場合、空気室温25℃で換算すると0.1mg/m3は約0.08ppmとなる。
- ●複合フローリング
- 木質系材料からなる床板であり、表面加工その他所要の加工を施したもので、合板や集成材などの木質材料を基材としている。表面に木材の薄板を張り合わせたもの(天然木化粧)と合成樹脂オーバーレイ、塗装、プリントなどの加工を施したもの(特殊加工化粧)とに分類される。
- ●ホルムアルデヒド(HCHO)
- 無色で刺激臭があり、常温では気体です。水によく溶け、35~37%の水溶液はホルマリンと呼ばれ、殺菌、防腐剤として使われます。建材では合板、パーティクルボード、それらを使用した家具、壁紙用の接着剤などから放散することがあります。室内の温度や湿度が高いほど放散が多くなる性質を持っています。人がホルムアルデヒドの臭気を感じる濃度は0.08ppmあたりといわれています(*)。濃度が高くなると、目、鼻、喉などに対する刺激を感じるようになります。さらに高くなると症状としては、不快感、流涙、くしゃみ、咳、吐き気などを起こすことがあります。 (*)厚生労働省の室内濃度指針値は0.08ppm
- ●モノマー
- 構造中に鎖が連なるように、多数の繰り返しの単位を含む高分子量化合物のことをポリマーといい、その製品はプラスチック、合成繊維などと呼ばれている。これに対しモノマー(単量体)とは、ポリマーを合成する際の原料となる低分子化合物のことをいう。ポリマーは化合物同士が固く結びあっており、安定した状態ということができるが、モノマーは他の化合物のモノマーと反応する性質があるため、不安定な状態であり、これが室内へ放散する原因となる。
- ●有効開口面積
- 換気上有効な面積。自然換気の場合、換気量Qと開口部前後差圧⊿Pの間に
Q=αA√(2/P⊿P)
の関係があるときのαAをいう。
Aは開口面積、αは流量係数で、大開口ではα=0.6~0.7となる。
開口部前後の流れの抵抗により、実開口面積よりも小さくなる。改正前の品確法では、見なし規定として測定によらない場合の開口部のαAを実開口面積をAとして1/4Aとすることを許容していた。
▲UP