残した古い建物の使い方
 建物が古くなると、使いにくくなることがよくあります。しかし、建物のある一部が使いにくいからといって、すべて建て直していたら、歴史ある建物は後世には残らないでしょう。使いにくい部分だけを直せば、本体の大部分は残ります。こうしたやり方で、住まいをはじめ、お寺や神社、旅館などが保存されています。
 また、元の使い方にこだわらず、違う使い方をしながら建物を残していく、という方法もあります。たとえば、東京の庭園美術館は元は皇族の住まいでしたし、函館や横浜などの港町では、大きな空間のある倉庫をレストランやお店にしています。珍しいところでは、学校を郷土資料館にしたり、銀行を音楽ホールに活用しているところもあります。
 個々の建物ではなく、まちなみ全体を残して地域の人びとが利用する例としては、岐阜県白川村の荻町地区があげられます。江戸時代からある合掌づくりの民家の集落は、住まいとしてではなく、昔の暮らしの体験施設や民俗資料館などとして利用され、観光客が昔ながらの建物の中で白川村の文化にふれることができるようになっています。

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