年間を通じて降水量が多く、四季がはっきりしていて、夏には高温となる気候。ゆたかな森林資源。
木造住宅は、日本の風土にもっとも適した住まいとして、古来より伝統を育み、人々の生活を支えてきました。
そして近年では、規制緩和の進展とも相まって、省エネルギーや健康、環境面におけるメリットが注目を集めるように。
そうした流れのなか、地域の木材資源の活用とあわせ、さまざまな振興策がはかられています。
いまこそ、国産木材で建てる木造住宅を見直してみましょう。
8割の人が好む木造住宅、なのに新築着工住宅では5割に。
「木の香りに癒しを感じる」「やっぱり木の家がいい」
日本人の約8割が木造住宅を志向しているといわれています。
しかしながら、実際の新築着工数における割合は、ここ20年、5割前後を保っているにすぎません。
その要因は?
長年にわたる耐火規制などから、いまだに「メーカーの家の方が安心」「木の家は高くつく」といった先入観をもたれている方が多いからではないでしょうか。
そこで、木の家のメリットをいっしょに再検証してみましょう。
木の家の4つの大きなメリット。
木が本来もつやさしさ、温かみに加え、最近では次の4つの効果が注目されています。
1.省エネルギー効果
木材は寸法にあわせてカット製材するだけでよいため、鉄やコンクリートに比べ、建造時のCO2排出量が少ない材料といえます。
さらに、地元の木材を使えば運搬エネルギーが少なくて済み、省エネルギー効果はより高くなります。
2.炭素貯蔵効果
木は、呼吸することで細胞のなかにCO2を取り込み、炭素化合物として固定します。
伐採後、木材製品として利用される場合、この炭素化合物は、処分されるまでの間ずっと貯蔵されつづけることになります。
住宅一戸あたりの炭素貯蔵量は、鉄やコンクリートの約3~4倍にもなるとされています。
3.健康
木は断熱性が高く、湿度を調節してくれます。また転倒時の衝撃が少なく、紫外線を吸収し目にやさしい、適度に吸音し、よい香りがある、などさまざまな効果があり、健康面ですぐれた材料とされています。
4.バイオマス効果
木造住宅の廃材から石油などの化石燃料に代わる燃料をつくる、木質バイオマスの実用化が進められています。
京都議定書の枠組みにおいて、こうした化石燃料代替エネルギーはCO2排出量にカウントされないため、CO2の削減につながります。
太い木材は実は火災につよい。
鉄は熱せられると短時間で温度が上がり変形してしまいます。木造住宅は、一見、火災に弱いように思われますが、断面積の大きな、太い木材の場合、火災にあっても表面が炭のようになり(炭化)、芯の部分は守られます。非常に高い熱にさらせれると強度を失ってしまう鉄に対し、優位性をもっているといえます。
世界有数の森林国、日本。
日本の森林面積は、およそ2,500万ha。
国土の2/3を占め、森林率では世界のトップクラスです。
そのうち天然林が1,338万ha、人工林が1,035万haとなっています。
人工林の多くは、戦後造成されたもので、植林後50年ほど経過したいま、伐採に最適な時期を迎えています。
しかし、住宅用木材のうち、国産材のシェアは30%程度。
利用可能な国内の木材資源量はふえているにもかかわらず、国産材のシェアが伸びてこない理由。
それは、国産材の価格が安価な輸入材によって抑えられ、
林業の活力がそがれているためです。
また、複雑な流通経路も国産材のシェアが上がらない要因とされてきました。
こうした状況をなんとか打破しなければ、という機運が近年盛り上がり、大きな変化を見せはじめています。
変化する国産材の流通経路。
かつて国産材の流通は、山林所有者・素材生産者から施工業者にわたるまでに、多くの中間業者の手を経なければなりませんでした。
これらをなくし、コスト低減をはかり、輸入材に対し競争力を。と、次のような変貌を見せはじめています。
国産材の活用を促進することの利点は。
国産材は日本の風土にもっとも適していることはもちろん、地域に対してさまざまな効果が期待できます。
1.地域を自然災害から守ります。
きちんと手がかけられている森林は、雨水を貯蔵する効果が高く、大雨の際の洪水を防ぎます。また、しっかりと根を張った木々が土砂崩れも防止。自然災害から人々の生活を守ります。
2.資源のムダづかいを防ぎます。
身近にある木材を有効活用することは、ほかの地域の木材の過度な消費を抑えることにつながります。また、運搬にかかるエネルギーの削減にもなります。
3.地産地消により地域経済を活性化します。
地域で育てた木材を地元で消費することにより、林業、木材生産・加工業、建築業を中心に地域経済の活性化につながります。
4.地域の気候・風土にあった家づくり、街づくりを推進できます。
地域で育った木材を使い、地域で用いられている工法・技術を利用して、住宅を建てることにより、気候・風土に最適な家づくり、街づくりができ、地域の木の文化が守られます。
安心の森林認証&産地証明。
国産材のなかでも、森林経営の持続性や環境保全などの配慮した森林から供給された製品を選んで、家を建てられるように第三者機関が独自の基準をもって、適合性を認証し、分別・表示管理する取り組み。日本でも、SGEC(「緑の循環」認証会議)などによる認証が進められています。
また、その地域産の木材であることを証明し、利用拡大をはかる制度もふえてきています。
いかがでしたか?
国産木材の家が、いま注目されている理由がわかるような気がしませんか。
現在、各自治体で国産材利用促進のための補助金や長期優良住宅を対象とした補助金など、さまざまな助成制度も用意されているこの機会に、あなたもぜひ検討してみてください。