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住宅とアスベスト

アスベストと住まい

取材 : 国立保健医療科学院 池田耕一部長

もしアスベストがあったら
除去よりも「封じ込め」や「囲い込み」で処理しましょう

アスベストがあるとイヤだから除去する、といったことが最近多いようですが、これはむしろ危険だと考えます。除去すると大量の発塵が起こり、かえって濃度が高くなってしまうことがあるからです。
除去工事を行っても、除去後のアスベスト濃度は除去前より高くなってしまうというデータがあります。アスベストは非常に細かい繊維なので、除去後35週(約半年)後でも、除去前より高い濃度を示していたという測定例があるくらいです。
また、除去すれば、その廃材を細かくカットしてから処理しなければなりませんが、細かく切れば発塵します。いい加減な捨て方をすればアスベスト繊維が大気中に広がってしまいます。さらに、断熱や吸音などの目的で使われているのですから、除去したら代替品を使わなければなりません。
いずれにしても宇宙服のような作業着を着て、建物自体を覆うシートをつけ、アスベストに水を含ませて湿らせ、飛散しにくいようにしてから除去作業を行います。大変難しく費用がかかる作業であり、誰でもすぐにできる作業ではありません。
それでも、どうしてもアスベストが心配ならば、接着剤や塗料、ビニールシートなどで覆う「封じ込め」、新しく壁を作って閉じ込めてしまう「囲い込み」という手法があります。

アスベスト測定は難しい
アスベストには冷静な対処が必要です

一般環境でのアスベストの測定は大変難しいものです。
高濃度のアスベストが検出されたというデータがあっても、測定が間違っていることが多いという話もあります。なぜかというと、一番よく使われる位相差顕微鏡での測定法は、訓練を受けた人でないとアスベスト以外の粉塵とアスベストを区別してカウントすることが難しいからです。
位相差顕微鏡を使った測定法はアスベスト鉱山やアスベスト製品を作っている工場など、作業環境で使われていた測定方法で、そういった場所では採取される粉塵のほとんどはアスベストです。しかし、一般環境の場合、アスベストは空気1リットルあたり多くても数本、このような状態の中からアスベストを識別するのは慣れていない人には非常に困難なのです。
現在、染色法という方法が使われるようになってきました。アスベストはある種の色素に染色するので、その色に染まったものだけをカウントする方法です。しかし、この方法は最近始まったばかりなので、以前のデータと比較が十分できていません。現在、位相差顕微鏡を使ったデータと比べてどういう関係があるかを調査しているところです。

アスベスト問題は、他の環境問題に比べて対策がはっきりしているものだと思います。飛散させなければいいし、吸い込まなければいいのです。
もし「これはアスベストだろうか、違うのだろうか」といったわからないものがあったらアスベストと思って対処してください。アスベストとロックウールは見間違うことがありますが、アスベストを混ぜ込んだロックウールもありますから、アスベストだと思って対処すれば、万全といえると思います。
怪しかったら囲い込んだり、封じ込めたりすればいいのです。
アスベストがあるからといって毛嫌いするのではなく、性質を理解して冷静に対処していくことが、これから非常に大事になっていくと思います。