住まいの中でも靴をはくような欧米の生活では、イスやテーブルで食事をすることはふつうですが、日本では、ほんの50年前まであまりみられませんでした。ダイニングテーブルが一般に広まったのは、1950年半ば以降に建てられた、公団住宅という都会のサラリーマン向けの住まいがきっかけです。それまでの日本の住まいでは、寝るところと食事をするところが同じ部屋ということが多かったのです。そこで、寝ている人のそばで食べている人がいるという衛生上の問題と暮らしにくさをなくすために、寝るところと食事をするところを分ける「食寝分離(しょくしんぶんり)」という考え方で公団住宅がつくられました。 一つひとつが決して広いとはいえない住まいですが、台所と食堂をひとつの部屋としたダイニングキッチンがあり、そこに備えつけのダイニングテーブルが置かれました。南側の明るいダイニングキッチンで、イスに座って食事をする生活スタイルがつくられていったのです。さらにダイニングテーブルの利用は、立ったり座ったりする動作が少ないので台所仕事や配膳が大へん行いやすく、家事を軽減する暮らし方としても注目され、普及していきました。
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