建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案要綱 |
第一 | 建築基準法の一部改正 | ||
一 | 著しく危険又は有害となるおそれがある既存不適格建築物に対する勧告及び是正命令制度の創設 特定行政庁は、一定の用途及び規模の既存不適格建築物について、劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認めるときは、当該建築物又はその敷地の所有者等に対して、必要な措置をとることを勧告することができるものとするとともに、その勧告に係る措置をとらなかった場合において特に必要があると認めるときは、その勧告に係る措置をとることを命ずることができるものとすること。 (第十条第一項及び第二項関係) |
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二 | 建築物に係る報告、検査等の制度の充実及び強化 | ||
1 | 国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(一定の用途及び規模のものに限る。)の管理者である国の機関の長等は、当該建築物の敷地及び構造について、定期に、一級建築士等に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならないものとすること。 (第十二条第二項関係) |
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2 | 国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物の管理者である国の機関の長等は、当該建築物の昇降機について、定期に、一級建築士等に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならないものとすること。 (第十二条第四項関係) |
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3 | 特定行政庁等が建築物の敷地、構造、建築設備等に関する報告を求めることができる者に、定期の調査等を行った一級建築士等を加えるものとすること。 (第十二条第五項関係) |
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4 | 建築主事等は、違反是正命令等をするために必要な限度において、建築物、建築物の敷地又は建築工事場に立ち入って検査等をすることができるものとすること。 (第十二条第六項関係) |
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5 | 特定行政庁に対する書類の閲覧請求の対象に、定期報告等の書類(所有者等の権利利益を不当に侵害するおそれがないものに限る。)を加えるものとすること。 (第九十三条の二関係) |
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三 | 特殊建築物の位置に係る規制の対象となる施設の明確化 特殊建築物の位置に係る規制の対象となる施設を明確化するものとすること。 (第五十一条関係) |
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四 | 条例による容積率算定の基礎となる地盤面の設定 地方公共団体は、土地の状況等により必要と認める場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、区域を限り、容積率算定の基礎となる地盤面を別に定めることができるものとすること。 (第五十二条第五項関係) |
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五 | 特例容積率適用地区内における建築物の容積率の特例等 | ||
1 | 特例容積率適用地区内の二以上の敷地に係る土地について所有権又は借地権を有する者等は、当該敷地について一定の利害関係を有する者の同意を得て、特定行政庁に対し、当該二以上の敷地(以下「特例敷地」という。)に適用される特別の容積率(以下「特例容積率」という。)の限度の指定の申請をすることができるものとすること。 (第五十七条の二第一項及び第二項関係) |
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2 | 特定行政庁は、申請に係る特例容積率の限度が、特例敷地における建築物の利用上の必要性、周囲の状況等を考慮してふさわしい容積を備えた建築物が建築されることによりそれぞれの特例敷地の土地が適正かつ合理的な利用形態となるよう定められていることその他の要件に該当すると認めるときには、特例容積率の限度を指定するものとすること。 (第五十七条の二第三項関係) |
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3 | 特定行政庁は、2の指定をしたときは、遅滞なく、特例容積率の限度その他の事項を公告するとともに、一般の縦覧に供さなければならないものとすること。 (第五十七条の二第四項関係) |
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4 | 特例敷地内の建築物については、2の指定による特例容積率の限度を、建築基準法第五十二条第一項各号に掲げる数値とみなして、同条の規定を適用するものとすること。 (第五十七条の二第六項関係) |
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5 | 特例敷地である土地について所有権又は借地権を有する者は、その者全員の合意により、特例容積率の指定の取消しを申請することができるものとすること。 (第五十七条の三関係) |
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6 | 特例容積率適用地区内においては、建築物の高さは、特例容積率適用地区に関する都市計画において建築物の最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならないものとすること。 (第五十七条の四関係) |
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六 | 一団地内の一の建築物に対する制限の特例 | ||
1 | 一団地内の一の建築物であって、特定行政庁が当該建築物の位置及び構造について安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものについては、当該一団地を当該建築物の一の敷地とみなして、当該建築物に係る容積率制限、斜線制限等を適用するものとすること。 (第八十六条第一項関係) |
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2 | 一定の空地を有し、面積が一定規模以上である一団地内の一の建築物であって、当該建築物の位置及び構造について安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、総合的な配慮がなされていることにより市街地環境の整備改善に資すると特定行政庁が認めて許可したものについては、当該一団地を当該建築物の一の敷地とみなすとともに、当該許可の範囲内において、当該建築物に係る容積率制限、斜線制限等を緩和することができるものとすること。 (第八十六条第三項関係) |
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3 | 1の認定又は2の許可を申請しようとする者は、対象区域内の建築物の位置及び構造に関する計画を策定して提出するとともに、その者以外に当該対象区域の内にある土地について所有権又は借地権を有する者があるときは、当該計画について、あらかじめ、これらの者の同意を得なければならないものとすること。 | ||
4 | 特定行政庁は、1の認定又は2の許可をしたときは、遅滞なく、3の計画に関して、対象区域その他の事項を公告するとともに、対象区域、建築物の位置その他の事項を一般の縦覧に供さなければならないものとすること。 (第八十六条第八項関係) |
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5 | 公告対象区域内において、1の認定又は2の許可を受けた建築物以外の建築物を建築しようとする者は、特定行政庁の認定又は許可を受けなければならないものとすること。 (第八十六条の二第一項から第三項まで関係) |
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七 | 既存不適格建築物に関する規制の合理化 | ||
1 | 既存不適格建築物について一定の範囲内において増築等をする場合には引き続き適用しないものと する規定に、構造耐力規定及び第三章の規定の一部を追加するものとすること。 (第八十六条の七第一項関係) |
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2 | 構造耐力規定又は避難関係規定が適用されない既存不適格建築物であって、これらの規定の適用に関し一の建築物とみなすことができる独立部分が二以上あるものについて増築等をする場合においては、当該増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては、これらの規定は適用しないものとすること。 (第八十六条の七第二項関係) |
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3 | 建築物の部分に係る規定の一部の適用を受けない既存不適格建築物について増築等をする場合においては、当該増築等をする部分以外の部分に対しては、これらの規定は適用しないものとすること。 (第八十六条の七第三項関係) |
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4 | 一の既存不適格建築物について二以上の工事に分けて増築等を含む工事を行う場合において、特定行政庁が当該二以上の工事の全体計画が一定の基準に適合すると認めたときは、最初の工事の着手前に適用しないものとしていた規定に最後の工事の完了時に適合させればよいものとするとともに、当該二以上の工事の間に改正法の規定の適用等があった場合に当該規定を適用しないものとすること。また、認定を受けた全体計画に係る工事の建築主に対する状況報告、措置命令、認定の取消し等の手続を整備するものとすること。 (第八十六条の八関係) |
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5 | 2及び3について、既存不適格建築物の用途を変更する場合及び工作物について準用するものとすること。 (第八十七条第三項及び第八十八条関係) |
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八 | 公共事業の施行等による敷地面積の減少に係る規制の合理化 公共事業の施行等により敷地面積が減少したときに建築物の敷地面積に係る規定に適合しなくなる場合において、当該建築物を当該規定に係る既存不適格建築物とするものとすること。 (第八十六条の九関係) |
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九 | 罰則に関する事項 違反建築物に関する是正命令違反について、行為者に対する罰則を引き上げるほか、不特定又は多数の者が利用する建築物又は当該建築物の敷地に関する是正命令違反のうち特に生命又は身体に重大な危害を及ぼすおそれがあるものについて、その法人に対して一億円以下の罰金刑を科することとする等、罰則の引上げ及び両罰規定の整備を行うものとすること。 (第七章関係) |
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第二 | 官公庁施設の建設等に関する法律の一部改正 | ||
一 | 各省各庁の長は、その所管に属する建築物(建築基準法第十二条第二項に規定するものを除く。)の敷地及び構造並びに昇降機以外の建築設備について、定期に、一級建築士等に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならないものとすること。 (第十二条関係) |
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二 | 国家機関の建築物に関する勧告等 | ||
1 | 国土交通大臣は、保全の基準を定め、その実施に関し関係国家機関に対して、勧告することができるものとすること。 (第十三条第一項関係) |
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2 | 国土交通大臣は、関係国家機関に対し、国家機関の建築物の営繕及びその附帯施設の建設並びにこれらの保全に関して必要な報告又は資料の提出を求めることができるものとすること。 (第十三条第二項関係) |
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第三 | 都市計画法の一部改正 | ||
一 | 商業地域の計画事項のうち特例容積率適用区域を廃止し、都市計画の地域地区として、特例容積率適用地区を追加するものとすること。 (第八条関係) |
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二 | 特例容積率適用地区に関する都市計画には、当該地区における市街地の環境を確保するために必要な場合に、建築物の高さの最高限度を定めることができるものとすること。 (第八条第三項関係) |
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三 | 特例容積率適用地区は、第一種低層住居専用地域等を除く用途地域内の適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、未利用となっている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区とするものとすること。 (第九条関係) |
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第四 | 密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律の一部改正 | ||
防災街区整備事業組合に関する法人税法及び消費税法に関する法令の規定の適用について、特例措置を設けるものとすること。 (第百六十四条の二関係) |
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第五 | その他 | ||
その他所要の改正を行うものとすること。 | |||
第六 | 附則 | ||
一 | この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、第一の三の規定は公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から、第四の規定は公布の日から施行するものとすること。 (附則第一条関係) |
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二 | 所要の経過措置を定めるものとすること。 (附則第二条から第五条まで関係) |
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三 | その他所要の改正を行うものとすること。 (附則第六条から第十三条まで関係) |