まちの歴史をとおして時代を知る
 昔からあるまちを歩いていると、心が安らいだり、懐かしい気持ちになることはありませんか。これは昔の人びとの知恵や技術が込められた道や水路、建物や門、庭などのひとつひとつに時間が積み重ねられ、今の風景がつくられているからなのです。
 たとえば、山口県の北部にある萩(はぎ)というまちは、美しい土塀が残るまちとして有名です。ここは1600年に起きた関ヶ原の戦いに敗れた武将・毛利輝元(もうりてるもと)がお城を築き、発展したまちです。お城の周囲には、家臣の屋敷や商人や町人の住まいがつくられ、城下町になりました。武士たちの屋敷の敷地はたいへん広く、道路に沿って土塀が長く続いていました。その土壁にはわざと曲がり角をつくり、道をわかりにくくして、敵の侵入に備えました。ところが明治になって武士がいなくなると、敷地の中の屋敷が壊され、収入になる夏ミカンがたくさん植えられたミカン畑になったのです。しかし畑になっても、土塀は敷地の境界として、そのまま残されることとなりました。
 現在でも、武士たちがどんな広さの屋敷に住んでいたのか、近世の土塀の作り方やかたちを間近に見ることができます。まちを歩き、歴史を知ることで、その土地の人びとの暮らしの変化の一部を、かいま見ることができるのですね。

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